おのしゅうのブログ

旧タイトル 注釈の多いオノマトペ

はなれて見つめるぼくの街【後編】

前編のあらすじ


藤沢を愛するあまりにちょっと変になってしまった「わたし」。
藤沢市を第三者的な視点から見るためにいろいろな方向から藤沢を見ることにした。
東、北、西は終わった。しかし、南側つまり海側が残っている。


【海から】〔南から〕
藤沢市の南側は相模湾である。
そしてわたしの個人的な趣味がカヌー(手漕ぎの船)である。
こうなればやることはひとつである。
海水浴場の隅で舟を組み立てる。

そして漕ぎだす。

これまでこのカヌーで、湖や川にはなんども行ったが海に出るのはこれが初めてであった。
海は怖い。波がある。
沖合から来る波ももちろんだが、やたら猛スピードで突っ走る水上オートバイみたいなのが怖い。
ぶつかるのも恐ろしいが、近くを通るだけで起こる波がものすごい。

○海から藤沢

江の島を陸側から見ることはよくあるが、海からの眺めは新鮮であった。
この写真を撮った後に、水上バイクが近くを通り
その波で我々の舟はひっくり返ってしまった。
そしてこの写真がその時使っていたカメラの最後の写真になってしまった。絶写である。
カメラは動かなくなってしまったが、中のメモリーカードだけは守られていた。
自らは燃え尽きながら小惑星イトカワの破片を持ち帰った「探査機はやぶさ」に通じるような感動エピソードではないだろうか。
われわれの舟は半分沈みながら江の島の岩場までヨタヨタたどりついた。


[見えてきたこと]
・江の島の存在感はやっぱりすごい
・カメラもったいない



これで東西南北、水平方向すべて押さえた。
となると残されたのはあとひとつ、垂直方向、つまり上からだ。


上からつまり、空からであるが市井の人であるわたしはヘリを飛ばすなどということはできない。
しかし、ヘリはなくとも神奈川県にはこれがある。
大山(1,252m)

古くから信仰の対象ともなっている霊峰大山である。
つまりこういうことである。


【大山から】 〔上から〕


登る。

大山は登山道もたくさんあり、それぞれ整備されていて歩きやすい。


山頂につく。


大山からは富士山がキレイに見える。

そして藤沢方面を眺めると、

なんと江の島が見える。相模湾にちょこんと首を出している。
そう言えば江戸時代の川柳集『誹風柳多留』に
「江の島は亀の子ほどに見えにけり(大山から)」
なんて言うような川柳があったような気もする。(おぼろげな記憶で未確認です)


○大山から藤沢

江の島のおかげで藤沢市がどの辺りかということがなんとなくわかる。
江の島を見つけた瞬間は
「ああ江の島だなあ、藤沢だなあ、やっぱりいいなあ」
などと思っていた。
しかし、ずっと眺めているうちに別の感情が芽生えてきた。
大山から市境は見えないのである。
『宇宙からは国境線は見えなかった』と言った宇宙飛行士がいたそうだが、
なんだかわたしもその気持ちが少しわかったような気がした。


[見えてきたこと]
・神奈川みな兄弟
・でも江の島の存在感もやっぱりすごい


藤沢のことは相変わらず好きだが、すこし見方を変えることができたような気がする。
これからは一方的に思い詰めるような偏愛ではなく、
おだやかに、ゆるやかに郷土を大事にしていくきっかけにしていきたいと思う。