おのしゅうのブログ

旧タイトル 注釈の多いオノマトペ

ポケットにピーナツを

今からもう二年以上前、まだ私が会社員だった頃の話である。

銀座三越にてスヌーピーフェアが催されていた。
金曜の夜、会社帰りに立ち寄った。

盛況で会場はごったがえしていた。
大半は女性であった。
数少ない男性客はどうやら恋人に連れられてというような形であるようだった。

日頃より特に恥じる事なくスヌーピー好きを公言している私であるが、
この時ばかりは羞恥心を自覚せざるを得なかった。

そこで私は、
「いやー、彼女がスヌーピー好きでプレゼントを買いに来たんだけど何を選んでいいのかよく分からないなー。」
というふりを一生懸命行った。

いま冷静に振り返ってみると、周りの女性からすれば
目の前にいる背広姿の男がどんな理由・心持ちでいようが知った事ではない。
というところであろうが、どこまでも自意識過剰な私は
「奇異に見られてはいないだろうか」
「彼女連れの男からバカにされていないだろうか」
などと、何か起こればすぐに謝罪と賠償を求めてやろうと
一人で鼻息を荒くしていた。


そのような私の前にひとりのおじさんがいた。
ダイエーで1500円ぐらいで売っていそうな野球帽をかぶっていた。
服はヨーカドーで2980円ぐらいで売っていそうなうじゃけた色のポロシャツだった。

彼のカゴを見るとぬいぐるみを筆頭に様々な小物が大量に詰め込まれていた。
少なく見積もっても15000円はオーバーしていた。

それを見た私は周りの目を無駄に気にしすぎていた自分を恥じた。
そのおじさんを「立派だ」と思った。
同時に「ここまでいったら終わりだ」とも思った。
ついでに「その前にもう少しいい服を買ったらどうだ」と思った。


結局、私はハンドタオルを1枚と数枚のクリアファイルを買い家路に着いた。

それを会社で見せびらかした所、皆に生ゴミを見るような残念な眼差しを送られた。

私もあのおじさんも言わば五十歩百歩であった。