おのしゅうのブログ

旧タイトル 注釈の多いオノマトペ

二週間の休暇

左足にちょっとしたケガをしてしまい、昨日まで入院していました。
5月末まで松葉杖を手放すことができないようです。


入院は10日間弱でした。
手術日とその翌日こそ、痛みで悶え苦しんでいましたが
そのうちに痛みもおさまってきて、ヒマを持て余すようになってきてしまいました。


暇つぶしのため、本を持ってきていました。
とにかく再読に耐えうるもの、という条件で厳選した結果
以下の2点が選ばれました。


・『雨月物語』 上田秋成
(近世の作品で九編の短編から成る。日本文学史を通じてもっとも優れた怪異小説とも言われる)


東海林さだお自選『ショージ君の旅行鞄』 東海林さだお
東海林さだお旅行記の自選集。海外旅行から近所の散歩まで50編以上を収録)


本当は入院日数×2冊程度(20冊弱になりますね)持っていきたかったのですが、
なにぶん松葉杖での移動のため、あまり重い荷物を持つことができなかったのです。


そのため厳しい選考の上選んだ二冊でした。
しかし後から振り返ってみると、両者ともあまり入院生活にふさわしい本ではなかったのでした。


雨月物語』は乱暴に言ってしまえば、「江戸時代のオカルト物語」です。
崇徳院の怨霊が・・・」「関白秀次の亡霊が・・・」
等々のおどろおどろしい文章を読んでいると、どんどん暗い気持ちになってしまいました。
ただでさえ病院の生活は気がめいるものですが、輪をかけて陰気な気分になってきてしまいました。


それに対し『ショージ君の旅行鞄』は気楽な文章です。
海外旅行から駅弁の考察まで、テンポよく、気持ちよく、楽しく何度でも繰り返し読むことが出来ます。
ただ、「食べ物」に関する表現力にものすごいものがあり、
それを読んでいると「あれもたべたいこれもたべたい」というような欲求がわきおこってしまうのです。
しかしいくら「カツ丼が食べたい」「ラーメンが食べたい」「鮟鱇のドブ汁が食べたい」
と思ってしまっても、そこは病院なのです。
目の前に広がるのは、カロリー計算がしっかりされた、なんだか味の薄い、必要以上にやわらかい、病院食なのです。
ただでさえ病院の生活は食べ物への欲求が高まるものですが、輪をかけて狂おしいような気分になってしまいました。


というわけであまり本に頼る訳にもいかず、
頑張って新聞を2時間かけて読む、半年ぶりくらいにテレビを見る、つまらない書き物をする
などの過ごし方でなんとか九日間を乗り切りました。


携帯電話をいじって時間つぶしが出来れば良かったのですが、パケット定額制にしていないのでそれが出来ませんでした。
厳密に言えば、絶対にできないということはないのですが翌月の請求が恐ろしいことになってしまいます。
こんなことなら早めにiphoneにでもかえておけばよかったです。
そのような後悔はいまさら遅いのです。



ところで、同じ病室のとなりのベッドが若い男(学生?)だったのですが、
そこに毎日のようにオンナノコがお見舞いにきていたのです。
「はやくよくなってね」「退院したらネズミの王国に行こうよ」
とかもう実に聞くに堪えないくだらない話をいつもしていたのでした。
それを見て、怒りとやるせなさと妬ましさで毎日2時間程イライラしてしまっていたのですが。
いまになって考えてみると、
「毎日2時間時間つぶしをさせてもらっていたからよかったかな」
と思えるのです。


本当にそうおもうのです。