そこに階段があるから(Because it is there.)
アキレス腱断裂という災難に見舞われた我が左足は相変わらずギプスで固定されている。
退院後一週間を過ぎたいまでも、松葉杖での生活を余儀なくされている。
そのためわたしの移動可能距離は、500mそこそこになってしまっている。
電車や車(左足の怪我のため運転可能)を使えばそれなりに遠くまでは行けるが
やはり駅や駐車場から500m程度移動すると疲労困憊である。
不便なことこの上ない。
それでも、松葉杖の使い方はここのところそれなりに上達してきた。
もともと松葉杖の使い方のスジがなかなか良かったようで、理学療法士の方から
「はじめてとは思えない程、松葉杖の使い方上手ですね。」
とのお言葉を頂く程であったのだ。
この「松葉杖での歩き方」のスキルが後の人生にあまり役に立たなさそうということは、実に残念である。
というよりも、すぐにまたこのスキルが役に立つようでは困る。
そんなことになったら今度こそクビになっちゃうかもしれない。
入院中を思い返してみれば、看護士さんにも、
「血管が太くて点滴の針が刺しやすいですね、いい血管です。」
と、お褒めも頂いた。わたしが他人にほめられるのはそんなんばっかりなのだ。実に残念である。
そんなわけで、昨日退院後はじめての外来に行ってきた。
抜糸の為だ。
病院へは車で向かった。
その病院の駐車場は、1F、2F、RFの三層仕立てになっている。
できれば1Fに停めたかったのだが、果たして1Fは満車であった。
やむなく車は2Fに停めた。
『徒歩で町田駅から城ヶ島へ』もかなりの大冒険だったが、
『松葉杖で駐車場(2F)から(1Fへ下りて、横断歩道を渡り、総合窓口を抜け)外来診察窓口(2F)へ』
もそれなりの冒険であった。
病院内の、総合窓口(1F)と整形外科の外来窓口(2F)間の上下移動は、エレベーターが設置されているのでなんということはない。
問題は、駐車場内の『1F』と『2F』との移動だった。
そこにはエレベーターなどの文明の利器はなく、古ぼけた投げやりな作りの階段があるのみなのだ。
その階段はやや傾いでいるうえ金属製なので松葉杖がすべりやすいことこの上ない。
診察後、1Fから2Fに上る際はまさに『恐怖の1分30秒間』であった。
松葉杖での階段移動は下りよりも上りが怖い。
下りで足を滑らせても足から滑り落ちていくだけだが、上りの際にひっくり返るとエラいことになる。
そんなことになったらたんこぶ程度では済むまい。
一度階段の真ん中あたりで、グラリと来てしまった時には彼岸が見えた。
もしそのままひっくり返っていたら、また入院することになっていたかもしれない。
「まあケガをしてもここは病院だから安心か、あははは」などと言ってる余裕はなかった。
今度こそクビになっちゃうかもしれなかった。
とにかく、無事に帰って来れてよかった。