暗い嵐の夜だった
アキレス腱が切れてから一ヶ月半ほどが過ぎ、
ギプスはまだ外れないもののなんとか歩けるようになっている。
左足のギプスの上に、ヒールと呼ばれるものが付き以下のような状態になっている。
(ボコッと出っ張っているのが「ヒール」の部分です)
はなはだ安定は悪いものの、左足をまったく地面につけてはいけなかった時代から比べると格段の進化である。
まだまだよちよち歩きだが、やはり自分の足で歩くというのはすばらしく気分がいい。
これまでは「歩く」という動作を過小評価していたかもしれない。
いまでは「足っていいな」と、すっかり『崖の上のポニョ』のような心境である。
この「ヒール以前」の時代は、なかなか外に出かけるのもままならなかった。
家にこもっているといろいろな欲求が溜まりがちだった。
(例 「外食がしたい」「酒が飲みたい」「温泉につかりたい」「山歩きがしたい」「川下りがしたい」等)
どれも現実的には難しいので、物欲で昇華させることにした。
出歩いてのお買い物というのは難しいのだが、幸い今の時代は「インターネットを通じてお買い物」という便利なことができる。
そこで以前から欲しかった『スヌーピーのネクタイ』を買うことにした。
オークション等で「あれも欲しいこれもかわいい」などとやっていたらいつの間にか8本にもなっていた。
どうもこのような買い物の仕方は、お金を使っているという感覚が希薄になるのかもしれない。
目についたものを全部買ってしまっていたのだ。
自分でお金を出して買った品物であるはずなのに
商品を待っている間は、なぜか人から贈り物を送ってもらうような心持ちになってしまう。
と、いうようなことを東海林さだおが「ツーハン日記」かなにかのタイトルで書いていたような気がする。
その気持ちがよく分かった。
ネクタイはすべてすばらしくカワイイものであった。
果たして8本も必要なのか、こんなものを締めて仕事をしていいのだろうか、
「無駄遣い」という批判を浴びるかもしれない、という若干の後悔も残った。
もしわたしが独立行政法人の人間ならば「事業仕分け」でつっこまれる部分かもしれない。
しかし、わたしは独立行政法人に関係はないし、なによりもう買っちゃたのだから仕方がない。
いよいよ来週から職場復帰である。
堂々とスヌーピーのネクタイを締めて粛々と仕事をこなそうと、いま決意を新たにしている。
(ただ、あんまりふざけていると見られても困るので復帰初日だけは普通のネクタイにしようかなとも思っている)