おのしゅうのブログ

旧タイトル 注釈の多いオノマトペ

復帰戦 丹沢塔の岳

一週間程前に、丹沢の塔の岳という山に登ってきました。
アキレス腱断裂後の発の登山です。


メンバーは、
わたし(足に不安を残す)
H田君(わたしの高校山岳部時代の友人 「三ヶ月前の進水式」「釧路川リベンジ」に登場)
I垣君(H田君の大学探検部時代の友人 上記に加え、「雨の多摩川紀行」においてもその活躍ぶりが確認できる)
の三人です。


もともとは、せっかくの夏休み期間ということで、
谷川岳(新潟・群馬 1,977m)に行こう」とか
八ヶ岳(長野・山梨 2,899m)を縦走しよう」とか
「いやいや、槍(長野・岐阜 3,180m)から大キレットを越えて穂高(長野・岐阜 3,190m)まで・・・」
などの計画も出たのですが、足がまだ完治していないわたしを気遣っていただき、ずいぶんと計画を小さくして、
「丹沢の塔の岳(神奈川 1.491m)日帰り」という所謂、安・近・短のプランになりました。


「ハワイ旅行7泊8日の旅」が『野毛山動物園日帰り』になっちゃったぐらいの規模縮小です。仕分け人もびっくりです。
しかし、『野毛山動物園』が『ハワイ』に比べて確かに劣っていると誰が言い切れるでしょうか。
お手軽である、ということは否定できませんが
野毛山動物園」には「野毛山動物園」の、「塔の岳」には「塔の岳」の、
それぞれ他に代えがたい魅力があるのではないかとおもいます。
そしてこのことは、山や旅行先に限らないはなしではないでしょうか。


前置きが長くなってしまいましたが、登り口の「大倉」というところです。

ムダに立派な吊り橋が架かっています。


林道(砂利の道。車も頑張れば通れないこともない。)をダラダラと歩いていきます。
この日、私とH田君はひどい二日酔いで(前日二人でかなり飲んだ、そしてH田君は朝から駅で吐いていた)
またI垣君は仕事上の深い悩みを抱えているらしく、表情が冴えません。
我々は好きで山に登っているはずなので、一応これはレジャーということになるはずです。
しかし、各々の表情はどれも「レジャー」とはほど遠く、まるで修行に向かう山法師のようです。


林道の終点近くに水場がありました。

ここで喉を潤し、やや気力が戻ってきました。


その水場のそばにこのようなカンバンがありました。

【この水は滅菌処理を施してはいません。飲料用として利用する場合には、沸騰させて(後略)】
われわれはもうここの水をしこたま飲んだ後です。


水場を過ぎ、歩きやすかった林道もいよいよ終わり本格的な山道に入ります。
今回のルートは最初に林道(高低差があまりなく歩きやすい)歩きが長いかわりに
後からまとめて、距離的には短いものの激しい急な登山道を詰めなければならないのです。
始めに楽をすると後に必ず苦労をしなければならない、人生の教訓のような行程なのでした。


どうしようもないので、むっつりと押し黙って登っていきます。
シカがいました。

ひとの姿をみても、驚いたり逃げ出そうとしたりする様子がありません。
近所の野良猫状態です。
そういえば登り口のあたりに、蝶がたくさんとんでいました。
「これはもしや山頂にはイノシシがいるのでは」
と口にしてみましたが、二人には黙殺されてしまいました。


歩き始め4時間程でようやく開けた尾根に出ました。
「花立山荘」という山小屋があります。

ここでH田君が「かき氷じゃんけん」を持ちかけてきました。
この花立山荘のかき氷(400円)を、じゃんけんで負けたものが三人分おごるというような話です。

勝負はあっさりと決まり、H田君が三人分支払うはめになりました。
これで彼は、二日酔い・急登での疲労・自ら提案した勝負での敗北、という三重苦を背負うことになりました。
苦しいでしょうがそれも人生というものなのでしょう。


ここから山頂まで、後一時間程です。

本来この山は展望がすばらしく、晴れていれば富士山や南アルプス相模湾まで眺めることができるはずなのです。
ところがこの日は登るにつれ、霧が濃くなっていき(登山用語でガスってるといいます)
山頂付近は辺り一面真っ白でした。


歩き始めから5時間でようやく山頂に到着しました。
やはり周りは真っ白です。


ここにもシカがいました。

山頂はそれなりのひとで賑わっているのですが、やはりこのシカも逃げたりする様子はありません。
超然としています。


お昼をとってから帰途につきました。
出発地点のバス停についた頃には、もうあたりは薄暗くなっていました。


今回はもともと、お気楽ハイキングのつもりだったのです。
しかしながら、結果的には想定以上に時間がかかり、そして三人とも疲労困憊でした。
これで、「20kg以上の荷物を抱えて4泊5日北アルプス縦断」などを強行していたらどうなっていたでしょうか。
考えるだけで恐ろしいものがあります。


『敵を知り己を知らば百戦危うからず』といいますが、
「己を知る」というのはなかなか難しいものがあるようです。
特に、
「昔はこれぐらいやってたんだから大丈夫だよ」
と以前と同じような感覚で久々の運動を行うことほど危ういものはありません。


それは、アキレス腱を切るはめになってしまうという大いなる危険性を孕んでいるのです。